昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「た、鷹政さん、ひょっとして踊るんですか?」
 よく段取りがわからず尋ねたら、彼はフッと笑った。
「そう。俺たちがまず踊らないと始まらないから」
「女学校で『チャールストン』は習いましたけど、もう忘れて……」
〝忘れてしまった〟と言って断ろうとしたら、彼は私の言葉を遮った。
「そういうのは身体が覚えてる」
 軽やかなステップで私をリードする彼。
これだけリズムが軽快だと彼についていくのに必死で、足元ばかり見ていて周りはもう見えなかった。
 でも、彼の言う通り、身体が踊りを覚えていて、中盤くらいから彼の顔を見る余裕ができた。
「うまいじゃないか」
 彼に褒められるが、自分ではそうは思わなかった。相手が違ったら、きっとミスを連発したに違いない。
「鷹政さんのリードが上手なんです。鷹政さんてオールマイティですよね」
「そんなことはない。パートナーにみっともない姿は見せられないだろ?」
 悪戯っぽく目を光らせる彼が眩しかった。
 曲が終わって少し残念に思う自分がいる。
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