昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「大事なパーティ。最後まで笑顔でいるわよ」
 気合いを入れてトイレを出ると、近くにあった椅子に腰を下ろしてヒールの靴を脱ぐ。履き慣れないから窮屈に感じて痛かったが、やっぱり脱ぐと楽。
 靴ずれはできていない。少し足を休めたら会場に戻ろう。
 身を屈めて足を揉んでいたら、近くの部屋のドアが開いて男性の話し声がした。
「デッキに人はいません。これから火をつけてもすぐには気付かれませんよ」
 火をつける? いったいなんの話?
「さすがの氷帝も驚くだろう。完成したばかりの客船がこれから火で覆われて沈没するんだからな」
 その悪意に満ちた声を私はよく知っていた。
 橋本清十郎!
 彼は招待されてなかったはずなのに、どうしてここにいるの?
 橋本清十郎の登場に動揺せずにはいられなかった。
 それに、彼は船がこれから火で覆われて沈没すると言った。
 大変だ! 船が沈没すれば、みんな死んでしまう。
 顔面蒼白になりながら考える。
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