昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「あの……私の弟です。よかったらお茶でも飲んで行きませんか?」
「いや、もう遅いから。怪我したところはしっかり消毒をしておいた方がいい。じゃあ、また明日」
 私の目を見てそう言うと、森田さんは軽く手をあげて玄関を後にする。
「あの人……凛姉さんの上司?」
 森田さんの後ろ姿をジッと見送る弟に聞かれ、首を横に振った。
「ううん、先週うちの会社に入った人。無口な人であまりしゃべったことはなかったんだけど、今日はいろいろお世話になっちゃって」
「へえ。普通の社員に見えないな。まあ、車持ってる時点で普通じゃないけど」
「うーん、家がお金持ちだけど普通に働きたいって人は結構いるわよ。春子さんだってそうだし」
 私の言葉を受けて、弟は少し寂しい目をして返した。
「うちも没落してなければ、姉さんもそうだよね」
 私は父に証明したかったんだと思う。
 伯爵家の力がなくてもちゃんと自立してやっていけるって。
 勉強だって頑張って男性の中で仕事をしている私を認めてほしかった。

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