昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
バチンと大きな音がして頬に激痛が走り、叩かれた衝撃で床に倒れ込む。
 その騒ぎを聞きつけて、弟が血相を変えて戻ってきた。
「凛姉さんになにをするんだ!」
 直史は私を抱き起こし、父に向かって声を荒らげる。
「私に余計なことを言うからだ。お前のような小娘が元大日本帝国陸軍大佐の私に偉そうなことを言うな」
 父はフンと鼻を鳴らし、食堂から走って玄関にやってきた琴さんに命じた。
「琴、なにか軽いものが食べたい。すぐに用意しろ」
「は、はい」
 琴さんがおろおろした様子で返事をし、私に目を向ける。
「凛お嬢さま……」
 私のことを心配しているのだろう。
「琴さん、行って。私はちょっと玄関で転んでしまっただけよ。大丈夫」
 叩かれた頬が痛かったがニコッと笑い、直史の手を借りてゆっくりと立ち上がった。
 私と父とのことに彼女を巻き込むわけにはいかない。
 弟も「凛姉さんには僕がついてるから」と琴さんに言うと、彼女は私を気にしつつも、食堂に戻っていく。
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