昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「ちょっと会社でパンをつまんだから。明日も仕事があるし、今日はもう寝るわね。手当てしてくれてありがとう」
 口早に言って、玄関前の階段を上り、二階の突き当たりにある私の部屋に入ると、ベッドに寝そべった。
 今日はいい日で終わるかと思ったのにな。
 涙が込み上げてきて、首に下げている指輪を掴む。
このくらいで泣くな。
 昔はもっと辛いことがあったはず。
 お兄さん、私に元気をください。
 強くなれ、強くなれ。家族を守れるくらいもっと強くなれ。
 明日は今日とは違う日が来る。
「きっと笑顔でいればいい日になる」
 指輪を握りしめ、目を閉じて祈った。

次の日は朝五時に起きて庭の野菜を収穫した。
 いつも以上に時間をかけてお弁当を作っていたら、琴さんがニヤリとした。
「そんなに熱心に作って、恋人でもできました? お弁当もふたつに増えましたし」
「こ、恋人? 違うわよ。昨日引ったくりから助けてくれたし、下駄だっていただいてしまったからそのお礼よ」
 
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