昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「おっ、おもしろそうな話をしてるじゃないか。松平さんが侯爵令嬢なのは知っているが、凛ちゃんもどこかいいとこのお嬢さんなのか?」
 彼に聞かれ、咄嗟に言葉を濁す。
「いえ……私は……そんなことは……」
 今の生活が恥ずかしいわけではない。没落する前でもうちのことは話さなかったと思う。
「凛ちゃんのお父さんってさあ、元大日本帝国陸軍大佐の……」
 佐々木さんが父のことを知っているようでビクッとするも、森田さんが彼の話を遮った。
「保科さん、これタイプお願い。あと、もう始業時間過ぎてるから、静かにしてもらえるかな?」
 彼に注意され、慌てて仕事に取りかかる。
「はい、すみません。仕事すぐにやります」
 私がタイプを始めると、佐々木さんは森田さんにチクリと嫌味を言って自分の席に戻った。
「森田さんは厳しいなあ。はいはい、仕事しますよ」
 森田さんは佐々木さんの後ろ姿をジッと見ていた。
ひょっとして今のは私を助けてくれたのかな?
 私が佐々木さんのこと苦手なのを彼は気付いているだろうし。
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