昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 社長を嘲笑うかのように言って、森田さんは私の手を離し、メガネを外してもっさりした髪を外した。それを見た一同が呆気に取られる。
 だが、ひとりだけ愉快そうに目を細めている人物がいた。
それは総帥。
 目をひん剥いて森田さんを見ると、彼は額にかかった前髪をかき上げてフッと笑みを浮かべた。
 彫刻のように美しく、目鼻立ちのはっきりしたその顔。
 彼が美形なのはメガネを取った姿を見て知っていたけれど、まるで天使のように神々しくてここまで美しい人とは思わなかった。
 あの髪はカツラだったのか。
でも、なんだろう。この光景以前どこかで見たような気がする。
「た、鷹政、なんでお前がここに?」
 社長が森田さんを指差し声を荒らげると、前の席にいる春子さんがボソッと呟いた。
「あの氷帝を近くで見れるなんてね」
 春子さんの言葉で思い出した。
 え? 氷帝って総帥の孫で、怖い人?
 まじまじと森田さんを見ると、彼は社長を見据えて言った。
< 63 / 260 >

この作品をシェア

pagetop