不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

「あーもう。そんな、顔させたいわけじゃないんだよ。イライラする」

頭を掻く主任に、ビクッと肩を揺らした。

「悪い、お前に怒ってるけど、今は怒ってるわけじゃないから、ビビんないで」

冷静になる為なのか、店員さんにアイスコーヒーを頼んだ主任。

不機嫌になる主任がわからず、飲みさしのオレンジジュースに手を伸ばした。その手を握って手の甲を親指でやたらと撫でてくる主任に戸惑う。

「あの…」

「お待たせいたしました…アイスコーヒーのお客様⁈」

空いてる手で軽く手を挙げる主任の顔と、繋ぐ手を交互に視線に入れた若い女の子の店員さんは、顔をほんのり染めて『お邪魔しました』とアイスコーヒーを置いて、そそくさと戻っていく。

そして…

「あそこのカップル。マジ、やばい。ケンカしてたカップルみたい。彼氏の方が、テーブルの上で手を繋いで仲直り仕掛けてるんだよ。ドラマみたい。あそこだけ甘すぎなんだけど…鼻血出そー」

興奮する彼女は、語尾があやしい。

恥ずかしいが、私達はカップルに見えるんだと、嬉しい。

主任も、聞こえていたらしく、にんまりとして…

「俺たち、そういうふうに見えるらしいぞ。鼻血出そーって、おもしれー。なら、ケンカ中カップルは期待に応えないとな⁈」
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