不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

だが、2度と、このお店に入らないと誓った私だった。

当たり前のように手を繋いでくる主任の手を振り払う。

懲りずに、また手を繋いできて、今度は振り払えないように指を絡めて恋人繋ぎ。

立ち止まって、頭ひとつ分の視線をあげて冷ややかに見つめた。

「ただでさえ恥ずかしいのに、あんなリップサービスいりました?」

「だってな、あの子、俺たちがケンカしてるって思ってたんだぞ。実際、イラついてたし、お前は目を逸らしてるし、どうしていいかわからず困ってた。ケンカしたわけじゃないけど、仲直りしなきゃと手を握ってたとこに、あの子のあれは、チャンスだと思ったんだよ。おかげで、香恋の可愛い表情が見れたから、そのお礼を言っただけだ」

ほんと、人たらしですね。

でも、好き…もう、好きです。

「仲直りしたかったんですか?」

「そうですが…仲直りしてくれますか?」

おどけて、空いてる手を前で振り、上目遣いでお辞儀する主任。

ほんと、なんなんですかね…やることなすこと、かっこよすぎですよ。

「自分のかっこよさをわかっててやるのって、卑怯ですよ」

かっこよさにのぼせそうで、見ていられない私は、歩きだした。
< 75 / 183 >

この作品をシェア

pagetop