不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
だが、2度と、このお店に入らないと誓った私だった。
当たり前のように手を繋いでくる主任の手を振り払う。
懲りずに、また手を繋いできて、今度は振り払えないように指を絡めて恋人繋ぎ。
立ち止まって、頭ひとつ分の視線をあげて冷ややかに見つめた。
「ただでさえ恥ずかしいのに、あんなリップサービスいりました?」
「だってな、あの子、俺たちがケンカしてるって思ってたんだぞ。実際、イラついてたし、お前は目を逸らしてるし、どうしていいかわからず困ってた。ケンカしたわけじゃないけど、仲直りしなきゃと手を握ってたとこに、あの子のあれは、チャンスだと思ったんだよ。おかげで、香恋の可愛い表情が見れたから、そのお礼を言っただけだ」
ほんと、人たらしですね。
でも、好き…もう、好きです。
「仲直りしたかったんですか?」
「そうですが…仲直りしてくれますか?」
おどけて、空いてる手を前で振り、上目遣いでお辞儀する主任。
ほんと、なんなんですかね…やることなすこと、かっこよすぎですよ。
「自分のかっこよさをわかっててやるのって、卑怯ですよ」
かっこよさにのぼせそうで、見ていられない私は、歩きだした。