不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

「…主任、火をつけてるので、やめてください」

「なら、こっち」

シンクに少しずれただけで、なんら変わらないと思います。

逃げれないように、シンクと主任の間に挟んだ私の顔を、両手で掴んでチュッ、チュッとおでこから、始まり、顔中至る所に唇が触れてキスしてくれるのに、避けられている唇。

物足りなさから、唇が自然と誘うように半開きで、隙だらけ。

それでも、ギリギリ唇の口角の辺りまでしか触れてくれない。

唇にキスしてほしい…

我慢できなく、願望を言おうとすると、ピッピッピッピッと、時間を知らせるタイマーが鳴る。

「残念だったね」

そう言って、わざと私の唇を指でなぞってから、フライパンの蓋を開ける。

「うわっ、うまそう。後はソースだな」

ハンバーグをお皿に盛り付けて、ハンバーグから出た肉汁を使って、冷蔵庫にあるケチャップとソース。それから砂糖も目分量でぱっぱと入れて、赤ワインをあけて火をかけてアルコールを飛ばし、トロッとなるまで混ぜて、最後にコクを出す為にバターを入れたソースを手際よく作る。ただ、気持ちの切り替えができない私は、その作業をながめてるだけだった。

もう、なんで意地悪するの?
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