不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「できたぞ。食べよう」
ソースに使ったワインの残りをグラスに注ぎ、お互い、真っ先に喉を潤す。
「うまっ…」
美味しいと、パクパク箸を進める主任。
私は、ワインをちびちびと飲みながら、先程から、主任がわざと焦らしているのはわかっている。
はぁー、頑張るって、どうするの?
ずっと、おあずけされている状態で、このままはぐらかされたまま帰るのは、試練でしかない。
ワインが進み、食後にチーズなんかも出してきた主任と一本空けて、普段の許容範囲を超えた量を飲んで酔っている私は、主任の唇ばかり気になって見ているのに、彼は素知らぬ表情。
シンクで、洗い物をしだして、「香恋は、もう帰るか?」
帰るか?って…
人をこんなに悩ましておいて、酷い。
それなら、私だって…
また、酔った勢いで…行動するのだった。
手が泡だらけの主任が、何もできないことをいいことに背中に抱きついた。
「どうして、唇にキスしてくれないの?なんで?主任といっぱいキスしたい…です」
「はあっ、このタイミングでそれ言う?酔ってるお前って、予想の斜め上いくわ。俺、手が泡だらけってわかってるよね」
背中越しに頷くと、蛇口の水を流して手を洗う主任。