不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

時間が迫る中、主任が入ってきていた。

「香恋…準備できてるか?」

仕事用に髪もスーツもビシッと決めた主任が、ラップに包んだ焼き色のついたパンを持ってきた。

「まだ、髪がまとまらないんです」

「可愛くまとまってると思うけどな」

私の毛先を指先に絡めて、耳に髪をかける主任。そのまま、耳の裏を指先でなぞる不明な行動。

「毛先がカールしないんですよ。いつもなら、寝る前に、巻いて寝るのに…」

「あー、そういう事前準備ね。もう少し時間あるし、頑張ってみろよ。ホットサンド作ったから、これなら、片手間に食べらるだろ」

「ありがとうございます」

「俺、もう行かないとだし、一緒に出勤できなくて悪いな」

「えっ、一緒に出勤できなくて、大丈夫です」

「なんだよ。それ…」

苦笑して腰を抱き寄せてきた主任。

「俺は、一緒に出勤したかったよ」

ボッと火がついたように熱く火照る頬。

「じゃあ、先行くな」

蕩けそうな笑顔を向けられ、後をついて歩き、玄関から出ようとする主任の、腕を掴んでいた。

「んっ?」

「…いってらっしゃい」

「…いってきます」

目尻に赤みを刺した主任が、どこか嬉しそうな顔をして出て行こうと背を向けたが、振り返って、唇にチュッとキスを残して照れた表情で出ていった。
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