不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
しばらくして、涙は流してはいないが悔しそうな顔をして出てきた彼女は、鞄を掴んで「お世話になりました」と出ていった。
「…今時の子って」
山崎さんが言葉を飲み込んだのは、課長に睨まれたからで、皆が思っていますよと心で慰めたのだ。
「あれ、いいんですか?」
高木さんからあれ呼ばわりされる中村さん。
「ほっとけ…やる気のない奴がいても迷惑だ。お前は、人のこと気にするほど余裕なのか⁈もっと仕事させてやるよ。嬉しいだろ。中村の残していった仕事、お前がしろよ」
恐ろしい顔をさらに恐ろしくした課長による仕事の量の多さに、高木さんは、残業確定となった。
翌週になっても、中村さんは出勤して来ない。
皆が、中村さんのデスクをチラッと見てから課長を見る。
課長なら、何か知っているかもしれないが、聞いてどうする?と言われるのがオチで、誰も何も言えずにいる。
主任がいてくれたなら、あの日の中村さんを止めれただろうと、皆が思うのだ。
お昼の時間、いつもなら、パーテーションで区切った個室で取る昼食を、今日は、優香と食堂で昼食を取ることになった。
「中村さん、本気で辞めると思う?」
「どうだろう⁈いたらいたでイラつくけど、いなかったらいなかったで、寂しいのよね」
「ケンカ友達がいなくなったみたいな感じ?」