義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
「お兄ちゃん。お兄ちゃんも来てたの?」
 梓の言葉に渉は頷く。
「ああ。バスケ部でテストの打ち上げなんだ。梓も……同じだよな」
「そうだよ! 同じお店に来てたなんて偶然だね」
 三年生のテストスケジュールも同じだったので、渉も同じくテスト明けなのだ。
 ちなみにテストはまだ採点中だ。だから渉に見てもらったテスト勉強の成果を見せられるのは、来週末とか、そういう頃になる予定だった。
 ちょっと怖いような、楽しみなような。でも手ごたえはあったので、やはり楽しみだった。
「母さんにちゃんと言ってきたか?」
「言ってきたよ」
 梓はちょっと膨れる。そういうところをおろそかにしていると思われたくない。渉はちょっと笑って、「悪い悪い」と言った。
 今日、渉が同じ店に来ているというのを知らなかったのは、渉が特に親に「カラオケに行ってくるから」と報告する義務がなかったからだろう。
 もう高校三年生なのだ。報告するような年頃でもないし、お母さんもお父さんも、報告しなさいとは言っていない。梓にとってはちょっと羨ましいことだけど、年下なのだから、扱いが違ってもやはり仕方がないとも思う。
「なに飲むの?」
「んー、カルピスかな。甘いのが飲みたい」
「え、私、さっきカルピスだったよ」
「なんだ、気が合うな」
 何気ないことを話しながらそれぞれ飲み物を入れる。氷も少し入れた。
 元々サーバーで冷えているのだから冷やす必要はないけれど、氷がないと、ストローが浮き上がってしまうのだ。そういうことも初めてきたときに友達に教えてもらった。
 飲み物の準備もできて、梓が「じゃあ、また帰ったらね」と言おうとしたときだった。ドリンクバーコーナーに誰かがやってきた。
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