巡り行く季節の中心から【連載中】
米澤冬香(よねざわふゆか)というらしい。
腰までまっすぐに伸びた長髪に合わせているつもりなのか、前髪まで井戸から這い上がってきそうな幽霊のように伸ばしてやがる。
あんな状態で読書していて、視力は落ちないのか気になるところだ。


「ずっと一人でいないか?」
「んー、ちょっと本人に問題があってさー」
「問題?」
「そうそう。あ、ナッちゃんがちょうど良いタイミングで行ったね。ほら、あれ見てみなよ」


肩を竦めていたシゲが指差した先には、一生懸命米澤に話し掛ける女子の姿。
ありゃ隣の席の、芳賀……だったか?

その光景を見ていると、呼び起される過去の出来事。
昼休みに一人ぼっちで俯いていたクラスメイトに声をかけた小学生の俺が、瞼の裏に映し出されて眩暈を催す。
米澤に話しかける芳賀と、過去の自分を無意識のうちに重ねてしまうなんて、何をしているんだ俺は。
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