巡り行く季節の中心から【連載中】
「ナツさ、なんでそこまで一生懸命なんだ?」


米澤と仲良くすることでコイツにメリットがあるのだろうか?  
机を突いていたシャープペンの動きを止めたナツが、こちらに視線をよこした。


「仲良くしたいからに決まってるでしょ?」
「本当にそれだけかよ」
「何よその疑わしい目は」
「何か胸に一物ありそうな気がするんだけどな」
「……バレた?」
「ホントに何か魂胆があるのかよ!?」


当てずっぽうで訊いたつもりがナツがおちゃらけた顔をしたものだから、間髪を容れず突っ込みを入れてしまった。
それもわざわざ起立して、かなりのオーバーリアクションをとってまで。
無論、クラスメイトの視線は出し抜けな挙動に出た俺が独占状態である。

おずおずと黒板前を見てみれば、バラエティ番組で見かける指さし棒を手にしているオバハン教師が、メガネのフレームを指先でくいっと上げながらこちらを睨んでいた。
そこでようやく現在が授業中であることを思い出し、恥ずかしさで赤面しかけていた顔が次第に青ざめていく。
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