腹黒策士が夢見鳥を籠絡するまでの7日間【番外編② 2021.5.19 UP】


 私がぎりぎりと睨んでいるというのに、須藤先生はデスクから分厚い封筒をひょいと手に取り、

「あ、そうだ。研究費の申請通ったから、これから処理よろしく」

 そう言われて、どさっと書類を渡される。
 その書類の山を見て、私は首をかしげた。

 ここの研究室の先生が、というより、うちのほとんどの先生が申請しているのが、文部科学省が出す『科研費』という研究費だ。この研究室でも、父、須藤先生、三枝先生がそれぞれ項目は違うが科研費をとっている。

 特に理系にとってはスタンダードな研究費、ということで、私もその処理に慣れてきたところだった。
 しかし、今回のそれは科研費とは違う。


「これ、例年の科研ではないですね?」

「ウン。これは医学部と共同の総務省の方。ちょっとややこしいけど、本部の経理の柊さんに聞いて。どうしてもだめだったら、えーっとこの人」


 そう言って渡されたのは名刺。
 総務省の研究費担当の人の名前と電話番号がのっていた。


「処理、増えてごめんね?」

「それは全然いいんですけど。私でできますかね……」


 ここに入って3年目。やっと慣れてきたころに、新しいことなんて不安もある。
 しかし、須藤先生は、

「大丈夫、聞きながらでいいからやってみて」

と笑った。

 他人事だと思って……と恨みそうになったが、須藤先生は、家庭教師時代から『少し頑張ればできること』しかやらせない。

 つまり、私はできるって判断されてるのかな。
 子ども扱いされたと思ったら、次は大人として対等に扱われたりする。

 なんだか胸の奥がむずむずした。

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