夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
そういうことで一人、雨の雫をたくさん浴びながら帰っている。

人の心の穴を埋めるなんて難しいことをなんで仁菜は私に頼んだのだろうか。

幽霊は人に見えないからとわかりきっていることなのに、深く考えたくなる。

もしかしたら、仁菜がこの世をさ迷い続けている理由と何か関係してるのかもしれない。

それがどうであれ、大切な存在を失った者同士で友達になれたらどんなによいだろうか、なんて思う。

ぼんやり歩いていると、いつの間にか雨は止み、椿の家であるメガネ屋に着いていた。

思えば、異性の家を訪ねるなんて初めてだ。そのことに緊張しながらもインターホンを押した。

数秒も待つことなくドアが開かれ、椿が出てくる。紡神社で偶然会ったときと同じ、ジーンズに長袖の青いパーカーを着ていた。

「はい。どちら様でしょうか?」

どうやら前髪が長いせいで私の顔が見えてないらしい。いや、わざとそう反応してる可能性も一理ある。だが、それはどうでもいいことだ。

「西園胡桃よ。今日来てなかったから見舞いに来たの」

「なんだ、胡桃か」

椿は作り笑いを浮かべてそう言う。

「それより体調不良なのに出てきてよかったの」

「おう。サボりだからな」

呑気に言う椿に思わず噴き出してしまう。季節の変わり目のせいで風邪でもひいたのかと思っていたのだが、それは的外れな予想だったようだ。
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