夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
「これ、お届け物」

私はそう言ってノートのコピーを鞄から取り出し、手渡す。それを椿は感心するようにしばらく眺めてから

「胡桃って綺麗な字、書くんだな」

と頭を撫でてきた。本当は咲結の字だから複雑な気分になってしまう。とはいえ、真実を言うにも言えない状況だ。

「そんなわけないよ」

苦笑いまじりに言う私に椿はにこりと微笑む。それから少し強引に私の手を引き、言葉もなく歩き出す。繋がれていない手の方には花束を手にしていた。

「ちょっ!どこ行くの?」

「ついてきて。胡桃も行ったことがある場所だよ」

慌てる私を知るよしもなく、平然と椿は答える。これはついてきてというより、連行されているというほうが合理的なのだろう。

繋がれた手はまるで太陽の温もりのように温かい。そして優しい。心地がよくてこの時間が永遠に続けばいいのになんて思ってしまう。

「手、この前よりも冷たくなったな」

ふいに椿が切り出す。言われて初めて自分の手の冷たさに気づいた。氷のようではないが、おそらく一般的な人の体温よりかは低いだろう。ついさっき傘もささずに雨の中を歩いていたからかもしれない。
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