夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
「この前って?」

「紡神社で偶然会ったとき」

そういえばあのときも椿に手を引かれたんだっけ。もう九日も前のことなのに遠い思い出のようだ。

神社で偶然会ったときのことを思い出す。あのとき私は仁菜ともう一度会いたいと祈ったのだけれど、

「東山君は何を祈ってたの?」

「すまない。今はまだ言えないんだ」

まだってことはいつかは教えてくれる時がくるかもしれない。そのいつかはわからないけれど、僅かに近いような気がした。

「そう……なんだ」

どう反応すればよいのかもわからず、声がかすれる。

そのあとはしばらくの沈黙が続いた。互いに切り出せる話もなく、ただ歩く。

空を見上げれば厚い雲の隙間から夕日の光が差し込んでいた。メガネ越しに見たその空は思ったより綺麗なものだった。

「さて、着いたぞ」

そう言って椿は立ち止まる。目の前には目立つようにそびえたった大木。周りにはジャングルジムやブランコという公園には有りがちな景色。そう『大木公園』だ。

大木には五メートル上の辺りに枝が折れたようなあとがある。十日前にここに登って自殺しようとして都合よく折れてくれたあの枝。死ぬことはなく今も生きているけれど、何も痛みを感じなかったのが不思議だったことを覚えている。
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