夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
大木の根元には赤い花が一輪、添えられていた。きっとここで亡くなった人がいるのだろう。

「お墓?」

御影石みたいなものはないけれど、なんとなくそんな気がした。

「そう。俺の祖父のだ。もう七十も超えてる年寄りだったのによ、この木に登って枝から飛び降りて自殺したんだと」

悲しそうに椿は言い、手に持っていた花束を根元に添える。花束には赤い花が二輪あるだけだった。

「その花は?」

「椿。花言葉は謙虚な美徳。おやじらしいなって思ってさ」

自分の名前でもある椿の花を添えるだなんて椿らしいと思わず噴き出してしまいたくなる。でもここは墓だということを忘れないように無理やりおさえた。

椿は両手を合わせて祈る。私も続くようにそうした。顔も見たことないし、話したこともないけれど、椿の知り合いとしてお祖父さんの幸せを祈る。それが今の私にできる唯一のことだと思う。

「胡桃は突然消えたりしないよな?」

合わせていた手を離しながら椿は言った。

「消えるわけないじゃん」

わかってる。人生に必ず終わりはくるって。だけど、悲しそうな椿を見ていたらそばにいたくなってしまう。

この気持ちは何だろう。胸の中がざわざわしている。
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