夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
親に会えない寂しさを仁菜といることで紛らわしながら必死に生きていた、この二年。仁菜を失った今だからこそ、新しく出会った人と味わう夕焼け。それはきっと特別なものなのだろう。一生頭の中に記憶して忘れないように務めたい、そう思った。

「なぁ、胡桃。顔、見ていいか?」

椿は夕日が沈み終えた空を眺めながら言う。

「今まで見てなかったの?」

「おう。誰にも顔を見られるのも見るのも嫌っと隠してたから」

確かに人の視線というのは怖いものだ。四方八方から集中してきて、それは恐怖に変わって自分の身に襲ってくる。力が抜けて足が震えてすくんでゆく。いじめられていたときはその視線が特に嫌と感じていた。

椿も過去にそんなことを経験したのかな。だからこそ前髪で目を隠すことを決めたのだろう。まだそこは謎に深まれているけれど、私の顔を見たい思ってくれたことが純粋に嬉しく思った。

「いいよ」

自然な笑みを浮かべながら私は言った。

椿は前髪をチラリと掻き分ける。その隙間から透き通った栗色の瞳が見えた。

栗色の瞳には私の笑顔がぼんやりと映し出されている。だけどどこか悲しげで、死んでいるように見えてしまった。私はそう見えていることを隠して「綺麗だね」と呟く。

「ごめん。やっぱ慣れてないや」
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