夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
椿は顔を埋めながら言う。どうやら今は顔を見られたくないらしい。

「あの理由、おやじの自殺もあるんだけどさ、それ以上に大きな理由があるんだ」

"大きな理由"という言葉がずしりと胸にのっかってくる。

「今から話すことは俺が人の顔を見れない理由とも関係してる。今まで誰にも話したことないけれど……」

椿はそこで言葉を切る。それから埋めていた顔をこちらに向け、長い前髪を掻き分けて栗色の瞳でまっすぐに私を見つめてきた。同時に胸の鼓動が速くなる。

「胡桃。お前には話しておきたいんだ」

意を決したように強く椿は言った。

なんで一番に話しておきたい相手が私なのだろうか。家族でもなく、先生でもなく、傷つけられた一人である私。よくわからないけれど、意味があるような気はした。

「これ、見て」

そう言って椿はパーカーの袖をまくりあげる。その腕にはかすり傷やカッターで傷つけられたような後、青紫色に染まったあざなどがいくつもあった。

もう長袖を着ているような季節ではないのに、それでも着ていた理由がわかった気がした。きっとこの傷を見たら気持ち悪く思われるから、誰にも見せたくなかったのだろう。

「……ひどい。一体誰がこんなこと……」

衝撃のあまり出てきた声はかすれていた。
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