OLユンファ。闇の左手。
はったい粉
[はったい粉(麦粉)]

はったい粉(麦粉)というのは煎った麦を臼でひいたもので、手持ちの資料によると、石臼ができるまえに、堅臼(たてうす)搗き杵(つきぎぬ)で、はたいて麦粉をつくったことから、はったい粉という。

旧家でばあやが作ってくれた「はったい粉」という飲み物は麦粉と白砂糖をコップにいれて湯を注ぐ。すると鼻をくすぐる香ばしい香りとともに、はったい粉の甘味ができるのだった。

ばあやが、はったい粉をあたしのまえでつくるときの無性に嬉しそうな表情が今になるとひりひりと思い返される。

それら郷里を思い返すと、あたしはただ無性に頭を下げて、あたしが育った旧家をもう一遍無心して訪ねてみたい気がする。けれど想像のなかのいつわりの閑暇でしか、ばあやや旧家にはもう会えないのだ。
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