幼恋。




「聞いた?木下くんまた喧嘩してたらしいよ」






そんな噂が私の耳に飛び込んできたのは
高校に入学してしばらくたった今日。



入学から既に目立ってて、この短い期間で何度も喧嘩を繰り返している椛。







「沖田ちゃんも一緒にいたの?」






女の子たちが噂しているのを静かに聞いていると、その子たちが私にそう聞いてきた。


どうして私が一緒にいたに繋がるのかは分からないけど…。


多分幼なじみでよく絡まれてるからそうなるんだろうな…。



だからあんまりみんな近づいてこなくて友達らしい友達も特にできたことも無い。




少し悲しくなりつつ、違うよと伝えようと口を開くと同時に
私の肩をポンと叩かれた。






「沖田ちゃんがそんな喧嘩の時に居そうに見える?」



「え?」






そう言って、私に笑いかけてきたのは
あまり話したこと無かった同じクラスの
大園 架子(おおぞの かこ)ちゃん。


ちょっと不思議ちゃんだけどあっさりした子なイメージ。






「沖田ちゃんこんなに大人しくて可愛いのにそんなこと言うなんて酷いな〜。
幼なじみが木下くんだからって同じとは限らないでしょ?」



「そ、そうだね…ごめんねー」






架子ちゃんのその言葉に女の子たちは苦笑いでそそくさとその場を去ってしまった。



突然の出来事に私が戸惑っていると、架子ちゃんは私ににっこり笑いかけてくれる。






「ずっと友達になりたいと思ってたの!
でも沖田ちゃんあんまり話しかけられたくないのかなーと思ってて」



「そんなことないよ!」



「あはは!自己防衛してただけなんだね!
じゃあ今から友達!よろしくねおりは」



「よ、よろしく!」






架子ちゃんの言葉に少し涙が出そうになる。



友達。
嬉しいな。






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