離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
逃げられない状況に、それならいっそのことそのお見合い相手と恋愛をすればいいのだという我ながら超プラス思考に考えが転じた。
用意された出会いだけれど、そこから恋愛をしたって問題はない。
初めて会うお見合いの席で、私は彼とふたりきりになったタイミングではっきりと自分の気持ちを告げた。
『私はまともに恋愛したことがこの歳までありません。だから、こんな形の結婚でも、あなたと恋愛して心から愛したい』
彼の目を真っすぐに見つめ、真剣にそう伝えた。
だけど、ふたを開けてみれば待っていたのは酷い新婚生活だった。
婚姻届を出した直後、達樹さんはひとりカナダへ海外研修に出てしまったのだ。
『待っていてほしい』
それだけを言って、遠い海の向こうへ行ってしまった。
出会って間もなければ、一緒に過ごした時間なんてほぼなかった。
達樹さんにとって、所詮お見合いで一緒になった私なんて大した存在でもないということ。
それを証明するように、向こうに行ってからこの一年間、連絡は数回しかきていない。
それも、私のほうが応じられずかけ直しても、今度は達樹さんが応じられないというすれ違いがあると、もう話すことは叶わなかった。
今日まで、電話で会話をしたのは片手で足りる程度と記憶している。