離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
『到着便のご案内をいたします。バンクーバーからの、ジャパンスターエアライン、三〇七便はただ今到着いたしました。なお──』
アナウンスが流れ、腰かけていたソファを立ち上がる。
いよいよだ……。
荷物を受け取り税関検査を受けた搭乗客が続々とロビーに出てくる。
その中に、周囲の人々に埋もれない上背のある達樹さんの姿を見つけた。
一年前と変わらない、トップが長めのこなれたミディアムショートの黒髪。
グレーのシャツに黒いネクタイを締め、スーツのジャケットは片手に持っている。
ひとりキャリーバッグを引き現れた達樹さんの元へ、しゃんと背筋を伸ばして足早に近づいていく。
正面から近づいてくる私の姿に気付いた達樹さんは、その場で足を止めた。
「おかえりなさい」
対面し、顔を上げて彼を見つめる。
百六十センチも身長がない私は、百八十センチ以上も身長がある達樹さんを見上げるような姿勢になる。
ごくりと喉を鳴らし、バッグの中から折りたたんだ離婚届を取り出す。
鼓動が大きく打ち鳴るのを感じながら、紙を広げた状態にして差し出した。
「離婚……してください」
やっと言えた、言いたかったひと言。
だけど、重すぎる言葉を口にしたせいか何かに押し潰されるような重苦しさを感じる。
目の前に出された離婚届に目を落とした達樹さんは、表情ひとつ変えずにじっと紙面を凝視した。