離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
「今日から一か月……六月十日までにお前の気持ちを取り戻してみせる」
自信たっぷり宣言するように言った達樹さんは、グラスを持ったまま固まる私を真剣な眼差しで見つめる。
その目の奥に偽りはなく、吸い込まれるように目が離せない。
「それまでにお前の今の気持ちが変わらなければ、これは素直に提出する。どうだ?」
「そ、そんなこと、言われても……」
「たった一か月だ。あっという間に過ぎ去る。それくらい、俺にだって猶予があってもいいだろ」
猶予──そう言われて、確かにそれも一理あると思ってしまった。
一か月……。
そんな短い期間で、この一年に募らせた私の気持ちを覆せるとは到底思えない。
離婚したいと、これだけ強く思ってきたんだから。
「……わかり、ました。でも一か月後、私の離婚の意志が変わらなかったら、その日にきっぱり離婚届を提出させてもらいます」
毅然とした態度でそう伝えると、達樹さんはふっと表情を緩め「ああ、わかった」と微笑を見せる。
今すぐ離婚できないのは、帰国するのがあと一か月先延ばしになったと思えばいい。
そう自分に言い聞かせて、この場で解決しなかったことに目を瞑った。