離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
静寂に包まれたふたりきりの空間で、途端に緊張が背中を這い上がってくる。
食事をするまでは人目もあったし、ふたりきりじゃなかったおかげで意識するほどの緊張には包まれなかった。
だけど、思いもよらないホテルの部屋にふたりきりという状況に困惑は広がる。
離婚届にサインをしてもらう予定が、夫婦関係が続行になった上にホテルのスイートルームに来てしまうことになるなんて一体誰が考えるだろう。
「うわっ」
東京の夜景を見下ろしていると、突然背後から胸元に腕が回される。
耳の近くでくっと笑うのが聞こえた。
「なんだ、その色気のない反応は」
「い、色気って、そんなもの!」
たじろく私を腕の中で捕まえたまま、達樹さんは頬にかかる胸下までの長い髪を耳にかけていく。
露わになった耳元に唇が近づく気配を感じた。
「やっとふたりきりだ」
鼓膜を震わせる低い声に、耳から広がるように肌が粟立つ。
逃れるように俯いた私を、達樹さんはふっとまた笑った。