離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「とりあえず……おいで」


 腕を解き、達樹さんは私の肩を抱いてそばのソファへと腰かける。

 自分のものかと疑うくらい心臓が高鳴っている。

 こんな経験、今まで一度だってない。

 心臓の音が全身を包み込んでいるような、こんな感覚初めてで……。


「みのり」


 不意に名前を呼ばれ、釣られるように顔を向ける。

 婚姻届を提出してから一年が経過。

 考えてみれば、達樹さんに名前で呼ばれるのもこれが初めてのことだ。

 そんなことに気付くと、自然とふふっと笑いが込み上げた。

 達樹さんの「どうした?」と言わんばかりの視線を受け、口を開く。


「初めて呼ばれたなって、思って。みのりって」

「ああ、そう言われてみればそうだな。でも、俺の中ではもうすでにずっと呼んでるけど」

「え? それなら、もっとちゃんと声に出して呼んでくれたって……」

「これからは毎日何度も呼ぶ」


 ソファの背もたれと私の間にある達樹さんの手が、ふたりの距離を密着させるように肩を抱き寄せる。

 すぐそばからじっと見つめられて、甘さを秘めた奥二重の目にどきりと鼓動が音を立てた。

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