どうしているの?ねぇ、先輩…
「今じゃなきゃダメ?」
瞬先輩の声が、冷たい気がした。
いつもの優しい声じゃなくて、私の知らない低い声に聞こえた。
「ちゃんと仲直りしてこいって、みんなうるさいんだもん」
仲直り…?
ケンカしてたって、こと?
じゃあ……
じゃあさっき私と直人くんを選んでくれたのは、ケンカしてるからあず先輩を避けてただけってこと。
私のためでも直人くんのためでもなくて、理由はやっぱり、あず先輩だったってこと……
あず先輩には、あんなに冷たい声も出すんだ。
私の知らない先輩を、あず先輩は知ってるんだ。
「直人、七瀬。ごめん、すぐ戻ってくるから」
「あー、うん、どうぞどうぞ、いってらっしゃい」
顔、あげられないから、瞬先輩がどんな顔をしているのか、全然わからないけど……
俯く視線の先に見えていた先輩の靴が、向こうに歩き出して行くのが見えた。
行かないでなんて、言えるわけもなくて……
下唇を噛みながら、ジッとなにかに耐えるだけ。