どうしているの?ねぇ、先輩…



頬に触れていた先輩の手が、今度は髪の毛に触れて。

触れたまま近づいてくる距離に……どこを見て、どんな顔をすればいいのかわからない。


どうしようどうしようって……


近づく距離が、10センチくらいに縮まったとき、やっと目を瞑った、ら……



「ねー、早く帰ろうよ」

「待って、トイレトイレ!」



廊下から聞こえた生徒の声に、2人揃って目が開いた。



あ、れ……雰囲気が。


壊れた……。



静かな廊下に響いた声は、ものの数秒で聞こえなくなるくらい遠くへ消えていったけど。


静かな場所に残された、私たちは……




「「…………。」」




近かった顔は、一端離れて……沈黙。


数秒の……沈黙。



の、あと。




「うーわ、雰囲気ぶち壊された」




瞬先輩が、笑った。

いつもみたいに、笑ってる。


だから私も安心して、肩の力がスーっと抜けていった。



「今の、ちょっとびっくりしまし、」



……びっくりしましたね。


言おうと思った言葉が言えなかったのは、


口が、塞がれたから。


言いかけて顔を上げたその瞬間に、唇が重ねられたから。


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