狂おしいほどに君を愛している

15.???

「っ」

「ノエル?どうかしたのか?」

「‥…オルガの心臓が暴走している。スカーレットっ!」

心臓が爆発するのではないかと思えるぐらいの勢いで脈動する。

急に走り出した俺を呼び止める声が背後からするがそんなことを気にしている場合ではない。

この暴走の仕方は尋常でない。

周囲の人間がどうなろうが構わないが、スカーレットだけはダメだ。

たとえ世界が滅ぼうとも君だけは無事でいなくてはいけない。

たとえ世界中の人間が不幸でも君だけは幸せでなくてはいけない。



◇◇◇



「何してるの?」

オルガの心臓を辿って行きついた場所は大通りから少し離れた裏道。

そこで赤く光るスカーレットとその彼女に剣を振り下ろそうとする男がいた。

俺はまずひょろ長の男の顔面を殴りつけた。

俺に顔面を殴られたひょろ長の男は壁に激突して頭と顔が潰れた。

次はスカーレットに剣を振り下ろそうとしている男だ。

背後からその剣を掴む。

男は俺から逃れるように剣を振り下ろそうとするがびくともしない。当然だ。俺はまだ完全に回復してはいないがそれでも非力な人間に力で負けるほど弱くはない。

この男、どうやって殺してやろうか。

「くそぉっ。放せ」

「がはっ」

スカーレットが吐血した。

まだ幼い彼女の体でオルガの心臓を使うのは負担が大きすぎるのだ。

まずスカーレットだ。この男の処理は後で良い。

俺は掴んでいた剣を素手で粉砕する。

「ひっ」

さすがに怖くなったのか顔を青ざめさせ、がたがたと震える男を地面に倒して、逃げられないようにその上の乗っかる。

「スカーレット」

「‥‥‥」

俺が呼びかけるとスカーレットの視線が俺を捉える。

ああ、彼女の瞳には今俺が映っているんだ。

「誰?」

鈴を転がすような可愛らしい声だ。

「スカーレット、もう大丈夫だよ」

俺はスカーレットの頬に触れる。

彼女の中にあるオルガの心臓に意識を集中させて、暴走しかけている力を徐々に終息させていく。

「ぐっ」

今の俺ではかなり負担になるな。けれどスカーレットを守れるのならこれぐらいのダメージ、何ら問題はない。

力が徐々に収まっていくとスカーレットは意識を手放した。

俺の腕の中で眠るスカーレットはとても愛らしく、愛おしい。

「ごめんね、スカーレット。君を助けてあげたいけど、今の俺のにはまだその力がないんだ。でも、必ず助けるから。今はゆっくりお休み」

俺に会った記憶は消しておく。少し寂しいけど、仕方がない。

「愛しているよ、スカーレット」

さぁ、そのスカーレットを傷つけたものを処理しなくてはね。
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