BLADE BEAST
「今?…千代ちゃんって子と一緒にいるけど……どうしたの?」
………私は、やはり何処にもいないようだった。
痛い?
悲しい?
寂しい?
そんなのごっちゃになってもうよく分からない。
"莉央?" "どーしたの?" "あ、千代ちゃんちょっと待ってね"なんて楽観的な声が聞こえてきた時には、私はもう携帯を耳に傾けることはなく、力なく腕を下ろしてしまっていた。
雑居ビル群がグニャリと折り曲がり私を嘲笑う。
どうせお前はその程度の人間だ。信じたくて一緒にいたのに、結果はたいして変わらなくて残念なこと。
…そう言われているようで、ゆらゆらとただ下を向きながら歩き始める私は、画面をオフに切って晄のことをシャットアウトする。
私はずっと、晄に私を、私として、私だけを見てほしかったんだ。晄なら見てくれるかもって期待した。
両親になんてカケラも意識にいれてもらえない私は、知らない間に晄に"愛"や"幸せ"を求め、そしてそれがいかにも叶っているのだと自らに言い聞かせていた。