BLADE BEAST
"アイツ"とは晄のことだというのは、僅かに孕ませている真剣な声色からすぐに理解ができた。

同時に顔が見えるくらいの距離をとる眞紘は私のことを見てきたんだけど、何でだか上手く視線を合わせることは出来なくて。

瞳が、泳いだ。




「ねえ、」

「…」

「アイツは」

「…こ、晄は…」




眞紘は口籠る私のことを逃してはくれなかった。

さっきよりも強く言い切るようにして私の耳に届いてくるそれ。無意識にポケットの中に入っていた携帯を握り締めていた。




「晄は…今、他の子といるから」

「…」

「家出た時電話…したんだけど、そう言われた」

「…」

「私が悪いの。本当はさっきまで晄と一緒にいてね…、もっといたいって言ってた晄にもう帰るって…言ったのは私だし」

「…」

「ついさっき帰るって言った女が今度は何?って感じだよね……。やっぱり一緒にいてもいい?って言おうとしたって調子が良すぎる…。もう晄は他の子を呼んでた…」
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