仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
「こ、これは……?」
「無水鍋だ。前に言っていただろ? 欲しいって」
「あっ、聞いてたんですか!?」
あれは結婚してすぐの頃、料理雑誌に載っていた無水鍋を見て『欲しいなぁ』と呟いただけ。
「なんでもしてあげたいと思ってたから、でもどうやって渡せばいいのかわからなくてやめたんだ」
「そうだったんですね……」
私はダンボールを開けると雑誌に載っていた通りのデザインな鍋が入っていた。
「もし、良かったら料理が一緒にしたいと思う」
「え? 料理、ですか?」
「咲良が体調悪い時、何も作れなくて情けなかった。後悔したんだ。だから念のために」