幼馴染からの抜け出し方
「由貴ちゃん?」
不自然に途中で言葉を切った由貴ちゃんが気になって呼び掛けてみる。けれど、由貴ちゃんからの返事はない。
さっきからなにを見ているのだろう? そう思って、由貴ちゃんの視線の先を辿っていった私の体が一瞬で凍り付いた。
「えっ……」
私の実家の前にひとりの男性の姿を見つけてしまった。たぶん由貴ちゃんもその人を見て言葉を止めたんだと思う。
そこにいたのは私が今一番会いたくない人――元彼の森谷君だ。
「やっと会えた」
森谷君はそう言うとゆっくりとこちらに向かって足を進める。周囲が薄暗いせいで表情がよく見えないけれど、声の様子からして機嫌が悪そうだ。
「どうしてラインも電話も無視するんだよ。返事ぐらいくれてもいいだろ」
森谷君が一歩近付くたびに自然と私の足は後ろへ向かって距離を取る。
たぶん、森谷君から送られてくるメッセージに私が一度も返事をしなかったから、わざわざ私の家まで来たのかもしれない。
どうしよう……。
会いたくない。
話したくない。
すると、そんな私の異変に気が付いた由貴ちゃんが、素早く私の前に立つと森谷君との間に壁を作ってくれた。