幼馴染からの抜け出し方

 私を隠すようにした由貴ちゃんの行動が気に入らなかったのか、森谷君が由貴ちゃんに向かって鋭い声で告げる。


「あんた誰ーーあっ、もしかして噂の由貴ちゃん?」

「そうだけど」


 森谷君に馴れ馴れしく〝由貴ちゃん〟と呼ばれたことが気に入らなかったのか、由貴ちゃんの声がいつも以上に低くなる。

 由貴ちゃんは、基本的に穏和な性格で人との争いをとても嫌う。争うくらいなら自分がぐっと我慢をしてその場の雰囲気を壊さないようにする人だ。

 大人になった今ならそういう強さもあると理解できるけど、子供の頃の私はそんな由貴ちゃんを頼りない弱虫だと思っていた。
 
 でも、たまにそんな穏やかな由貴ちゃんでも怒りを押さえられなくなるときがある。

 私もまだ片手で数えられるくらいしか見たことがないけれど〝ブラック由貴ちゃん〟はすごくこわい。

 それに、そうなった由貴ちゃんは私でも手が負えない。そして今まさにそれになりつつある。


「あんたこそ森谷君だろ? めぐの元彼の」


 まずい。由貴ちゃんの喋り方がいつもと変わっている。初対面の森谷君から、馴れ馴れしく由貴ちゃんと呼ばれたことが不愉快だったのかもしれない。

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