弔いの鐘をきけ


「あら、この道」
「ニコはこっちから行くことなかったよね、あたし、大学帰りによく通ってるからこの辺詳しいんだ」

 ジェシカは共働きの両親に代わってちょうどいま長期休みだからと毎日のようにニコールの元へ来てくれている。本が大好きな彼女は大学でも図書館に入り浸って教授たちから一目置かれているとか。
 ニコールは大量の汗を流しながら坂道を登り終えてぜいぜい息をはくジェシカにありがとうと囁いて、目の前に現れた建物を臨む。

「――まさか、生きているうちに、またここに来られるなんてね」

 リーン、ゴーン。
 荘厳な鐘の音色が空気に溶け込む。それは、生きる者だけでなく死ぬ者をも包容する美しい鐘の音。

「お花買ってきますね!」

 教会の建物の前に車椅子を止めて、ジェシカが売店の方へ走っていく。秋口の風がジェシカの黄金色のポニーテールに戯れるかのようにまとわりつき、ふわりと揺れている。
 ニコールは車椅子に座ったまま、見慣れた教会の景色を眺める。
 ふだんは正面から入っていたから気づかなかったが、墓地側から入ると鐘楼がやけに目立つ。あの鐘は時刻を示すために鳴らされている時計塔の鐘とは別物の、結婚式や葬式などで鳴らされる、特別な鐘だ。
 その鐘が鳴らされているということは、誰かが結ばれたか、死んだか……
 ニコールが目を凝らすと、黒い人だかりが見えた。
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