弔いの鐘をきけ

 甘やかしてばかりいたわけではないが、もうすぐ自分が死ぬことに対してジェシカは過敏になりすぎているきらいがある。共働きの息子夫婦に代わって幼いころから面倒をみていたから、彼女が自分にひどくなついてくれたのは理解できるが……

「ねぇ、ニコ?」

 ジェシカの声が響く。まだ明け方じゃないの、今日はずいぶん早いのね……

「寝たふりなんかしないでよ!」

 ゆっさゆっさ、ニコールの身体をジェシカが遠慮なく揺さぶるが、うつ伏せになったニコールの身体はぴくりとも動かない。

「ジェシカ、やめなさい」

 そういえば、珍しくジェシカの母親の姿がある。扉の傍で唇を噛みしめたミトの姿も見える……それに気づいたニコールはギョッとする。視線の先にぐったりとした自分の身体がある。起きろと念じてみてもジェシカに揺さぶられても身じろぎひとつしなかった身体は主の命令にも沈黙を続けている。

「ねぇ、嘘でしょう? ニコが死んじゃうなんて」
「まだ心臓は動いていますが、時間の問題でしょう」

 ニコールの耳底へ無感情な医師の声がこだまする。

「……え」
「ニコ!」
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