弔いの鐘をきけ
ジェシカは押し殺した声で泣きはじめた。
泣くときまで我慢しなくてもいいのに、ミトの前でも感情を爆発させたくなかったのだろう、彼女は弔いの鐘を邪魔しないよう、ニコールを困らせないようにひそやかに涙を流しつづける。
そのまま、長いようで短い時間が経過した。
「……ジェシカ」
「ひとは死んだら、どこへ向かうんだろう」
ミトがジェシカを抱きしめたままだからか、彼女は不貞腐れたように問いかけてくる。ひととおり泣き終えたジェシカは、ニコールの息子と呼ぶには若すぎる、けれども自分の兄と呼ぶにはじゃっかん年の離れた青年に胸を借りたことを恥じているようにも見える。
「天国、かな」
ミトはジェシカの背中を撫でながら、ぽつりと呟く。
「……天国は、遠いよね」
「そうでもない」
背中を撫でていた手を彼女の顎にもっていき、ミトは意地悪く提案する。
「君がお望みなら。俺が天国に一番近い場所まで連れて行ってやる」
「ミト……?」