弔いの鐘をきけ


 ――そうだ、このままあの寝台に押し倒して、無垢な彼女に天国を教えてやろう。ニコールが死んだ今なら、ジェシカは俺を拒めない。この先憎まれ嫌われようが……このまま彼女が持つ才能を潰すのは、惜しい。それならばいっそ。

「天国に、一番近い場所?」
「そうだよ。賢い君ならもう、理解しているんじゃないか」

 部屋の真ん中に鎮座する寝台に視線を向ければ、ジェシカがカッと頬を赤らめる。生娘らしい反応を前に、ミトはくすりと笑う。
 悲しいのならば慰めてやる、という意味にもとれるミトの発言は、ジェシカの心を傷つけるには充分すぎた。苦しそうに「最低」と言い返して、逃げようとする。けれど、がっしりと腰に腕をまわされた状態で、愉快そうな表情を浮かべる彼に「君の原稿を見出したのは俺だよな?」と追い打ちをかけられてしまう。

「……最低」
「最低で結構。俺は、ニコールの死で君の輝きを失いたくないんだ。そのためなら」
「すきでもない女でも抱けるってこと!?」
「すきだよ? ジェシカが気づいていなかっただけで」
「違う、ミトがすきなのはニコールでしょ、ニコが死んだから……」
「それのどこがいけない?」
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