弔いの鐘をきけ
* * *
「……カ、ジェシカ」
内耳に響く低い声音は誰のものだっけ。
教会の鐘の音みたいだと言ったら「俺はそんなにやかましくないぞ?」と言い返された。子ども相手に何ムキになっているのよとニコに窘められていたのが、彼――ミトとの出逢い。
年の離れた兄みたいに思ってくれればいいと言いながら、タチアナ書房で働くミトはしょっちゅう遊びに来るティーンになったばかりのジェシカの相手をしてくれた。思えば彼の影響でミステリやアクション、ホラーなどを読むようになった気がする。ニコが選んでくれた童話やファンタジー小説もすきだったけど、ミトと一緒に謎解きの本を読む時間があのときはいちばんワクワクした。ハイスクールに入ってからは一緒に本を読むなんてこともなくなったし、ニコも体調を崩して入退院を繰り返すようになったから、ふたりで何かをすることも自然となくなってしまった。ただ、ニコと一緒にベストセラーの本を紹介してくれたり、大学進学のアドバイスをしてくれたり、兄らしいところも相変わらずで。
『さいきん、面白い物語を読んでないんだよな……なんならジェシカ、書いてみないか?』