弔いの鐘をきけ
きっとそれも嘘ね、とジェシカが断言すれば、彼はそうかもしれないね、と大人の余裕でさらりと流す。そんな風にからかうのはもうやめて、とミトに身体をやさしく拭われる都度、艶を帯びた声をあげながらジェシカは抵抗するが、彼はその手を止めることなく甘く囁く。
「やめないよ。君が口づけを許してくれるまで」
そのまま乳首を甘噛みして、彼女の下半身を疼かせて。
ミトはふたたび、彼女を犯す。
* * *
ニコールの死からはじまったジェシカとミトの関係は、恋人同士というよりも共犯者、と呼ぶようなものだった。ミトによって女にさせられたジェシカは身体を編集者であるミトと重ねながら、ニコールという筆名でタチアナ書房からささやかにデビューした。処女作は恋愛要素のないミステリだったが、ミトとの関係が深まるにつれ少しずつ恋愛を絡めた作品が生まれるようになる。
大学在学中にノミネートされた文学賞で、ニコールの名は全国的なものとなる。ジェシカというひとりの少女の存在は薄れ、作家ニコールが彼女の名刺に変わった。それでもまだ、彼女はミトに口づけを許していなかった。