弔いの鐘をきけ

 自分はミトのために物語を綴っているわけではない、だってこれはニコのための鎮魂歌。そう思いながら筆を進めてはため息をつく日々……

「ニコール先生、進捗はいかがですか」
「相変わらず厭味ったらしいことこの上ないわね、ミト」
「探偵と女怪盗のバトルシーン、もうすこし華を持たせてもいいのでは?」
「……そうね。ニコだったらきっと」

 ――さりげなくキスしてそう。

「ジェシカ。おいで」

 あぁ、どうしてこの意地悪な海色の瞳はあたしが考えたことを即座に見抜くのだろう。ジェシカは筆を置いてすくっと立ち上がり、ミトの方へ身体を向けて歩きだす。

「ミト。こういうとき、キスを仕掛けるのは女怪盗の方よね」
「ああ」
「背の高い探偵の顎を掴んで、つま先立ちをして――……ねえ」
「キスしたくなった?」
「――そのうるさい口を塞がせて」
「喜んで、お姫様」

 ふたりの影がひとつに溶け合う。
 意地を張っていたジェシカと、彼女の恋の芽生えを見守りつづけたミトは、はじめてのキスをする。
< 47 / 48 >

この作品をシェア

pagetop