薔薇の嵐が到来する頃 吹き抜ける物語 ~柚実17歳~
 はーい、と皆一様に返事をする。
 そしてわらわらと、アルパカの木柵の中へ入っていく。
「凄い。するする食べてく」
「腹減ってたのかな」
 手のなかにあった牧草は、あっという間になくなった。
 純も同じらしく、アルパカの背中をゆっくりと撫でていた。
「凄いぞ、毛量」
 私も同じく触れてみる。
「ほんとだ。手首まで入っちゃう」
「毛、柔らかい」
「思ってたよりね」
 アルパカは二頭いて、あっちの子に五人、こっちの子に五人といった感じでお客が愛でていた。
「あ~ん、届かないよ~。おかーさーん」
 足許で声がした。
 見れば小学生くらいの男の子が、背伸びをしてもアルパカの口に届かず、アルパカもそのエサに気づかずといった状態だった。
 その子のお母さんは、ちいさな赤ちゃんを抱っこ紐で前に抱えている。
「抱っこしますか?」
 私はお母さんに声をかけた。
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