薔薇の嵐が到来する頃 吹き抜ける物語 ~柚実17歳~
 返事を聞くよりも先に、私は男の子を腰の位置でひょいと抱き掲げた。
「あ、食べてる~」
 男の子は満面の笑みになる。
「どうもすみません」
 若いお母さんはぺこりと会釈する。
「よかったねぇ、きーちゃん」
「うん、あとね、触りたい!」
 その声を聞いて、今度は私はアルパカの背中側に回る。
 ちょっとその子は重かったけれど、持てないほどじゃなかった。
「ふかふかしてるよね」
 私が声をかけると、うん! と子どもは頷く。
「ふかふか~。脚も触りたい!」
「脚もふかふかしてるかな?」
 私は彼を下ろし、ふう、と息を吐いた。
「力あるな、柚実」
 純がアルパカのあたまを撫でながら言う。
「力ありますよ」
「子ども好きだったりする?」
「子ども好きだったりしますよ。子どもだけじゃなく、おじーちゃんおばーちゃんも。人類皆好き。世界平和。ラブアンドピース」
「ふ。何だそれ」
 そう笑いながらも、純はキリンのような優しい眼差しを私に向ける。
 そういう表情もできるんだ、と、私はまた彼に胸キュンしてしまうのだった。
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