アスミルセカイ

「あれ、どした」
春樹が朝陽と共にユニフォーム姿で体育館に入ってきた。

「あ、お邪魔させてもらってます」

朝陽は何故かバツが悪そうにしていて、軽く会釈だけした。
シュート練が本格的にスタートすると、、、

すごかった。絵になる。
というか…。あの。朝陽くん、めっちゃシュート決めてますやん。
でも、私の目の前のゴールでシュートしないな…。

(かっこいい…かも?)

よく分からない感情に見舞われていると、
朝陽くんが私の目の前のゴールに来た。その一瞬を見逃さなかった私。

パシャッ

その写真は自分の中でベストショットだった。

ベストショットが撮れたのでちょっと早いが帰ろうと思い、支度をしていると、

「料理部でーす!男子バスケ部の皆さんに差し入れに来ましたあー!」
料理部女子は男バスのイケメン軍団のユニフォーム姿を見るために週に2回は差し入れに来るんだそうで…。
ちなみにイケメン軍団とは、春樹、佐野くん、朝陽を筆頭とするメンバー。
(すごい…肉食女子)
「どうぞー!」

その時、どこからかボールが飛んできた。
「きゃっ」
料理部女子に当たりそうになっていた。

私は咄嗟に料理部女子の前に立ち、勢いよく手のひらでボールを弾いた。
「あぶな…」

料理部女子はビビって泣いている。
「大丈夫?」
料理部の女子達は激しくうなづいてくれた。

「ごめん、大丈夫?」
ボールの犯人は佐野くんだった。

「それはねーだろ、優希」
朝陽が優希を見て言う。
「誰止めたん?」
「雫ちゃん」

そして、
「おい、そろそろ行くぞ」
すっかり素を出した零が雫を呼ぶ。
「あ、うん!」
「ありがとうございました!」

「あ、あの!」
料理部女子が差し入れと思われるカップケーキを差し出す。
「ありがとう、雫ちゃん」
「え、いいの?!ありがとう。みんな無事でよかった!カップケーキも」

そう言って私はカップケーキとカメラを手に零の元へ向かう。

「写真どーだった?」
零が話しかけてきたので
「あー、こ、こんな感じ」
と、撮った写真を見せた。
どうせ、まあまあとか言うんだろうな。
ふーんとか。だんだん思考が読めてきたぞ。
零はニコッと笑って
「いいじゃん」


玄関。下駄箱をゆっくり開けていると、後ろからバンッと音がした。
私の真横で自分の下駄箱に拳をぶつけていた零。真っ直ぐ私の方を見る。
急すぎてよく分からない。
「邪魔」
それだけ言うと、さっさと帰ってしまった零。

「あ、雫‼︎帰ろー‼︎」
「ねえ、未来」
「ん、どしたの?」
「私、零くんのこと好きかも」
「へ、は、ふーん。…てええええええ!?」

これは6月のよく晴れた日の夕方のこと。
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