王子のパンツを盗んで国外逃亡させていただきます!
 だけど。進行方向には当然カインがいるわけで。
 長身のカインは手も足も長いわけで。
 私を捕まえることなど容易いわけで。

 私の本能的な逃走は僅か二歩。30センチも進まずに終了した。


「逃がさないよ」


 天蓋付の大きくて広いカインのベッド。
 一年前に忍び込んだ時にはただ眠るだけだったそこで。
 壮絶な色気と熱を宿した瞳のカインに見下ろされて。
 優しく。でも言葉通りに逃げ出せない強さで縫い止められる。


「君が学園を卒業するまではどんなに煽られても見逃してあげるつもりだったのに」
「ひぁ……っ」
「まさか失恋したと思い込むなんて。──リジィ。俺が、どれだけ俺の方が君のことを愛しているか。……今夜は全力で教えあげる」



 覚悟して。



*



「もう、ゆる、してっ。ゆるしてカイン……!」
「まだだよリジィ。まだ君は俺の想いを全然理解していないでしょう?」


 何度も意識を失いそうになるほどの長い時間。
 舐めて、解して、穿たれて。
 最初はズキズキとした痛みしか感じなかったソコが快楽の源に変わる。

「誓う? リジィ? 俺から逃げるなんて、二度と言わないと誓う?」
「ちか、う……! 誓う、からぁ……!」

 全力で教えてあげる。その言葉通りに。
 一度抱いたらもう私を離す気はないのだと。
 激しく熱く印を刻んで。
 彼の気持ちを信じられずに逃げようとしたことが嘘のように。
 私の全てをカインに染められた。
 
 「愛してる」
 囁きと共に吹き込まれた吐息。

 もっと。もっと。もっと。
 何度でもそう言って欲しくて。
 この愛から二度と逃げないと誓った。





*






 それから三ヶ月後。


 私は純白のウェディングドレスを着て、集まった観衆へ向けて王宮のバルコニーから手を振っていた。
 青く晴れた空の下。色とりどりの花びらと紙吹雪。皆が笑顔で喜びの言葉を叫ぶ光景はなんて幸せなんだろう。

 何度も何度も。ベストEDで見たイベントスチル(結婚式)

 だけど。
 だけど今、彼の横で微笑んでいるのは。



「リジィどうしたの?」


 リジィ。ブリジット=エスターナ。
 私はこの国の王妃になるために生まれきたの。




「うん……。私、カインと結婚できて、幸せだなぁって」

「俺も幸せだよ。この18年間。君以外を見たことなどなかった。おかしいかもしれないけど、生まれたばかりの君に一目惚れだったんだ」






 唇を重ねた私たちに歓声が大きくなる。
 祝福の声は、いつまでも送り続けられた。






fin

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