心理作戦といこうか。
見慣れたドアノブに手を伸ばすと指先の震えで緊張が伝わる。
それは私ではなくて、彼。
(良かった。玲君もドキドキしてるんだ。)

「どちらの結果にせよ、知っておいた方が良いから。
 俺はドアの前で待ってるから真琴のタイミングで頼む。」

なんだか畏まって頭を下げされて意表を突かれた気持ちになりコクンと頷き、覚悟を決めた。

「うん。
 失敗しちゃうかも知れないけど、行ってくるね。」

緊張を隠そうと笑顔を作るがどうも硬い。

「初めてなんだから失敗して当然だろ?
 そんな事は気にする必要ない。」

背中を撫でる大きくて温かい手に勇気を貰う。
ドアノブを下へとむけるとガチャと音をたてながら開かれた部屋へと入る。
箱の説明書きを読み終え、一度深呼吸をする。


* * *

結果は二人で見ようと決めていたので、検査薬を入っていたシルバーの袋に入れスマホのタイマーをセットしたのでお手洗いを後にする。
赤ちゃんがきてくれたのか、きてないのか。
きてくれていたら自分は親になるんだという恐怖が一瞬過る。
玲君は良いパパになりそうだなと自然に笑顔になる。
所謂、情緒不安定というやつに襲われる。

リビングのソファーへ移動したと同時にタイマーが鳴る。

(あっという間に時間がきちゃったよ)

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